ドラゴンの誘惑 2024年8月6日(火) - 12日(月) 10:00 - 18:30
ドラゴンの姿かたちとは、どのようなものでしょうか。 ドラゴンのイメージは、人々の心に無数にあるように思います。それは、多くのメディアでドラゴンが描かれているためで、現代に生きる私たちはドラゴン退治の伝説の時代を生きた人々以上に、身近にドラゴンの姿かたちを目にしたことがあるからかもしれません。いや、もっとロマンティックに考えるなら、恐竜が生きていた時代の末期には私たち哺乳類の祖先が共存していたので、私たちのDNAには恐竜の記憶が刻み込まれていて、生まれながらにしてドラゴンの根本となるイメージをもっているからかもしれません。 ドラゴンとは何者か。私にとってドラゴンはファンタジーの象徴です。現実世界では存在しえないが、存在していてほしいと心の底で願うもの。幻想でありながら、時に現実よりも確かに感じられるもの。 日々の生活に追われて生きる中では、さまざまな現実――つまらない、醜い、滑稽な現実を突きつけられます。そこで感じるのは、自分自身の無力、現実世界の無機質感。それらは、しばしば私の心を疲弊させます。 勿論生身の人の温かさに触れて救われることもある。けれども、それだけでなく、夢が、空想が、イメージを広げていける余白が、欲しくなる。ファンタジーは、現実世界と自分の心を解き放てる世界とをつないでくれるのです。――はたして、どちらが本当の世界なのか。ドラゴンは、私をファンタジーに誘惑し、私の魂は空想と現実のはざまでゆるやかに解き放たれます。 気づけば、私の作品箱には、何頭ものドラゴンが巣食っていました。私なりに調べたり、イメージを膨らませながら制作してきたのですが、調べれば調べるほど個性豊かなドラゴンがいて、世界の各地でさまざまなイメージを持たれている存在なのだと改めて驚きました。ドラゴンの語源は「鋭く見るもの」という意味だとも言われています。ドラゴンの視線に誘惑されてきた人間の歴史を感じます。 私なりのドラゴンが皆さんをファンタジーの世界にどこまで誘惑できるのか。ドラゴンの視線の先に皆さんが見るのは、どのような空想、はたまた現実なのか。この展覧会がみなさんの日常の中に、イメージを広げる余白を生み出せたなら幸いです。
がまサーカス387 (ガマサーカスサンハチナナ) 福井県生まれ 以後 地球市民として地道に生活をおくるかたわら、 制作活動を続けています。